横顔

小松様と洋服と私
津坂テーラー
津坂友一郎さん


 初めて小松様が『津坂テーラー』に来られた姿は、Tシャツと短パンツでした。私と父で経営していた店は、きちっとしたスーツでないと入りにくい店でした。 当時学生でいらした小松様の第一印象は、爽やかな笑顔と目の美しさが何か惹き付ける感性がありました。 小松様の90年日本指揮デビュー時は、亡き父が多くの部分を担当しました。

 コンサートでの父の喜び顔は、つい最近のように思い出されます。 

 いつもコンサート前後の小松様を見て思うのは、男の服としては、燕尾服・タキシードは『最高の男仕事服』だという事です。 舞台に出て観客を引き付け、楽員に曲の感性をご自分の指揮で表現する為、洋服も手伝う一部だと思います。 コンサート後の服を拝見すると自分を出し切った汗と満足感をふくんでいます。 その服を洗い流し新たな『仕事服』で新しい仕事に向う、私にはそう見えます。 それゆえ『最高の男仕事服』だと思います。

 『最高の男仕事服』とは

(1) 指揮者としての権威と信頼を表現する重厚感スタイル。 バックスタイルは、観客より観る華麗さを表現する綺麗なシルエット。

(2) 指揮者の曲に対しての表現を妨げない動きができる。 身体の動きと一体となる服で美しいシルエットが表現できる。

(3) 型崩れしない耐久性。 何回のクリーニングにも耐えられる技術。

 此れを納得させ作るには、建物で言えば、設計(御客様の希望に満足度を考える)、頭領(作る物全体の仕事を把握して指示する)と大工(熟練された職人が腕を振るう)の役割を一人で出来る総合プロデューサーでなければなりません。

 小松様がデビュー時の服作りでは、若いバイタリティーときれを表現し、身体を大きく見せ、タイトにフィットしたシルエットを考えて生地素材・パターン・作りをしました。 今回は、仕事が益々インターナショナルになり、あらゆるジャンルの曲の指揮で音楽・人間的にも世界が広くなっています。それを考えまして、ゆとりと安心の表現を心掛けました。 エレガントなドレープを生かせる生地素材とソフトなシルエットを出すパターン作りをしました。

 小松様の自然な新しい動きによる洗練された強弱の美しいエレガント感が表現出来ると思います。 私にとって新しい勉強と挑戦です。

 最近世の中のけじめと統制が付かなくなってまいりまして、服装もそれを反映してか乱れが目立っています。 私は、洋服について『服装・作法』を考え、きちっとした洋服作りと着用について、微力ではありますが、現代社会に個
々の服装をアドバイスして参りたいと思います。

 新調の服でのコンサートを拝見するのを楽しみにし、また勉強の糧にしたいと思っています。

津坂テーラー
津坂友一郎

津坂テーラー
総理大臣賞、通産大臣賞、外務大臣賞、文部大臣賞、東京都知事賞受賞、ディオール・ジャパン・アドバイザー、伊勢丹アドバイサー等歴任
Tel: 03−3991−0834
http://www2.ocn.ne.jp/~tsusaka/



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