曲目解説集

ラヴェル ピアノ協奏曲

モーリス・ラヴェル(1875−1937)

ピアノ協奏曲 ト長調(1932年初演)

『ボレロ』で有名なフランスの作曲家ラヴェルは、フランスとスペイン国境地帯にまたがる大西洋岸の隣町シブールで生まれ、その後生涯のほとんどをパリで過ごしました。1928年自作を指揮した米国演奏旅行の大成功を受けて、次回の演奏旅行の為にピアノ兼指揮を想定して書き上げられ作品です。1932年の初演及び欧州20都市公演は、ラヴェルの体調不良のため、マングリッド・ロン独奏/ラヴェル指揮で行われ、熱狂的に迎えられました。

<第1楽章> Allergamente(楽しげに)

ラヴェルは「管弦楽法の魔術師」と讃えられた管弦楽法の大家です。冒頭の鞭の音、ピッコロ、幻想的なハープ、極めて高音域のホルン等のソロなど、大胆で色彩豊かなオーケストレーションが繰り広げられます。また、彼はアメリカで誕生したジャズを非常に気に入り、うまく融合させました。それらはピアノ独奏パートだけではなくトランペットやトロンボーンの奏法にも顕著に現れています。音楽を雅(みやび)な最上の遊びだと考えていたラヴェルによる、優雅、ユーモア、そして神秘性あふれる音楽が繰り広げられます。

<第2楽章> Adagio assai (きわめて穏やかに)

冒頭は、長大なピアノソロ(実に2分超)で始まり、やがて木管と弦楽器が癒すように参入します。再現部ではピアノは背景にまわり、主題がイングリッシュ・ホルン(オーボエと同族の中低音楽器)によって回顧するかのようにしみじみと奏されます。

<第3楽章> Presto (とても速く)

ピアノの超絶技巧、華やかな管弦楽、そして目まぐるしく変容する情景が聴衆を魅了し、高揚感を以って曲を締めくくります。