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ラフマニノフ パガニーニの主題によるラプソディー(狂詩曲)
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セルゲイ・ラフマニノフ (1873−1943) 作曲
パガニーニの主題によるラプソディー(狂詩曲) (1934年初演)
ヴァイオリンの鬼才パガニーニ(1782−1840)が書いた『24の奇想曲』の最終曲は、「主題と変奏」であるが、 ラフマニノフは、この良く知られた主題を用いて、主題と24の変奏からなるピアノとオーケストラのための絢爛たる曲を書き、自ら初演の独奏者を務めた。 ラプソディーという、ギリシア古典詩に溯るロマンティクな文学用語のもと、リストやブラームスが民族色豊かな「外部」の題材で自由奔放な曲を創り出した延長線上に、本曲はある。 事実ラフマニノフは、葬送の際のグレゴリア聖歌である「怒りの日」も、「第2主題」として引用しながら、下記のように3つの作曲形式を重層的に同時進行させる離れ業をやってのけている。
以下の分析表がいささか専門的になるのは承知であるが、この曲の構成上の斬新さは看過しがたく、又この傑作が聴く者に「巻を措く能わず」の感を与え、それでいて単なる変奏曲ではなく重量感のある内容となっている理由解明の一助となるならば、筆者の喜びとするところである。
<同時進行する3つの形式>
(1) 変奏曲: 主題と24の変奏
(2)(3) 4楽章からなる交響曲4部構成 および ソナタ形式(ABA’)3部構成
I 第一楽章(アレグロ) ソナタ形式における提示部
冒頭から第10変奏終わりまで
第7変奏で第二主題として「怒りの日」がピアノで運命・劫罰的に提示される。
ちなみに「7」は聖書、教会で重要な数字である。
U 緩徐楽章 ソナタ形式における展開部
第11変奏から第18変奏終わりまで
(第18番のメロディーは、とても有名)
V スケルツォ ソナタ形式における再現部
第19変奏(3連符の早句)から小カデンツァで締めくくる第22変奏終わりまで
W 最終楽章 ソナタ形式における再現部・コーダ
第23変奏(パガニーニ主題がほぼ原形で繰り返され再度小カデンツァ)
第24変奏(「怒りの日」が金管で宿命的に鳴り響く)
ピアノの稀代の名手であったラフマニノフは、本曲を構想・作曲する際、『ハンガリー狂詩曲』と偉大なロ短調ピアノ・ソナタ(単一主題による間断ない通楽章形式)を残したピアノの神様フランツ・リストが念頭にあったであろうと推察される。
2008年7月18日セントラル愛知交響楽団定期演奏会のプログラムの曲目解説として書かれたものです。
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