曲目解説集

ブラームス 大学祝典序曲

ヨハネス・ブラームス (1833−1897)

大学祝典序曲 作品80 (1881年初演)

ブレスラウ大学から名誉博士号を授与された返礼として作曲された。(ちなみに早くからシューマンに弟子入りしたブラームスは大学生活には縁がなかった。) 大学への返礼曲は通常堅苦しくアカデミックな作品が予想されるが、学生団がビールを飲みながら羽目を外して高唱する学生歌4つを引用した祝典曲が創られたところに、 彼のユーモアそして仰々しさを嫌う照れが感じられる。 大学がある古城へ学生達が夜に三々五々集まる足音が聞える前奏に続き、賛美歌コーラル風の『我たちは立派な学び舎を建てた』(Wir hatten gebauet stattliches Haus) が厳かに奏される(金管)。 『祖国の父』(Laudesvater) が第二主題のように扱われた後、バスーンによる滑稽な『あそこの山から来るのは何だ。』 (Was kommt dort von der hohe ?) が現れる。 これを日本の深夜受験ラジオ講座の主題歌として憶えていらっしゃる方も多かろう。 学生達が将来遭遇するであろう困苦がゲーテ的疾風怒涛風(「若きヴェルテルの悩み」)に描写された後、クライマックスとしてラテン語の『いざ楽しまん』(Laudeamus igitur) が壮大に謳われる。 本曲は、あたかも、幾多を経た名人が、頼まれて短冊(たんざく)に易々と一筆したためたが如くの名品である。

2008年5月16日セントラル愛知交響楽団定期演奏会のプログラムの曲目解説として書かれたものです。


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