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ベートーベン 交響曲7番
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ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770−1827)
交響曲第7番 イ長調 作品92 (1813年初演)
ナポレオンがヨーロッパ全域を蹂躙(じゅうりん)し、個人的にもベートーヴェンが聴覚をほぼ完全に失った苦渋の時期に書かれた。 1813年ナポレオンとの戦いの戦傷兵のために初演された。 第2楽章は、葬送行進曲と亡き人たちの天国での逍遥(しょうよう)を表現する。そして強烈な2拍子のリズムに貫かた最終楽章は、理念を見据えて勇気を持って邁進する姿が象徴されていて、聴衆そして演奏者を最高レベルの高揚感と法悦に導く傑作である。
<第1楽章> Poco sostenuto/Vivace
3個の#によるイ長調は、3個のbによる変ホ長調(彼の交響曲第3番『英雄』の調)と並んで、ベートーヴェンが三位一体、3要素、遡ってはピタゴラス派の秘密の数字「3」を念頭に置いて選択したものと筆者は推察する。 宇宙・神威を現出する壮大な前奏のあと、エネルギッシュな8分の6拍子の律動に貫かれた本体が続く。 勇気ある宣誓、呼応、光、暗夜行路と自問等が凝縮されている。
<第2楽章> Allegretto
冒頭の木管によるイ短調の和音は、イ長調の「光」「生」と対比して「闇」「死後の世界」を象徴する。 葬送行進曲では弔う人々の悲嘆の絶叫を聴き、2度現れる楽園においては、安らかに歩む亡き魂たちを観る。 中間部のフーガ(教会音楽では真理の導きを象徴)は、死後漆黒の暗闇の中最後の審判に向かう魂たちの行進が描写される。
<第3楽章> Presto
生命力と軽妙なウィットに富んだスケルッツォ。 2度現れるトリオ(もともと3声部の簡易な音楽であったことが、トリオの語源)は、トランペット、ティンパニ、唱和する木管などによって楽園の壮麗な相を表現する。
<第4楽章> Allegro con brio
哲学者シラー(『第九』の詩の作者)は、「遊戯衝動」こそ人間の最高の状態であるとした。 前述の如く、理念を見据えて困苦を克服し邁進する、聴衆と演奏者を最高の法悦へと導きうる驚くべき舞踏音楽となっている。
2007年5月25日セントラル愛知交響楽団定期演奏会のプログラム用に書かれたものです。
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