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武満徹 ノーヴェンバー・ステップス
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武満徹(1930−1996)
ノーヴェンバー・ステップス(1967年初演)
音楽学校の入試にも失敗し作曲をほとんど自分で苦労して学んだ武満は、結核の病床で死を意識して書いた『弦楽の為のレクイエム』(1957)を来日中聴いたストラビンスキーによって見出された(1959年)。 本曲は 鶴田錦史(琵琶)、横山勝也(尺八)、バーンスタイン(指揮)、ニューヨーク・フィルにより、同団創立125周年委嘱作品として1967年11月9日に世界初演されて、大センセーションと絶賛を巻き起こした。
<ノーヴェンバー・ステップス という題名について>
ステップ(ス)は階段の段(ステップ)は勿論のこと、邦楽の楽章的段落分けの区切り、段も意味する。 実際に総譜には11(ノーヴェンバーは11月なので11)のセクションの区分けが記されている。 またNovember (ノーヴェンバー) はラテン語で数字の9を表す。 ちなみに世界初演日は11月9日である。
<オーケストラの配置について>
2つの弦楽群、2つの打楽器群、2台のハープが左右対称に配置される。 管楽器は、オーボエ、クラリネット、トランペット、トロンボーンのみで構成される。 舞台で右から左へ、左から右へ音が波及したり呼応したりする様は深層意識での心象の動きを想わせ斬新・独創的である。 この大胆な試みがフランス印象派の絵画や音楽(ドビッシー)、そしてメシアン等から触発された側面も当然あろう。
<『音、沈黙と測りあえるほどに』(1971) 『ひとつの音に世界を聴く』(1975) −武満の著作の題名>
ぎりぎりのところで絞り出される琵琶と尺八の音、一閃(いっせん)する直前の凝縮した沈黙、或いは漆黒の闇の沈黙、濃淡のある時の歩み、心象や情念を描くオーケストラ。 これらは人をして別の意識界に赴かせ、恐怖にも似た測り知れない深遠さを感じさせる。 第10「段」目の琵琶と尺八による大カデンツァはただ圧巻である。
2008年1月25日セントラル愛知交響楽団定期演奏会のプログラム用に書かれたものです。
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