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チャイコフスキー 幻想序曲『ロミオとジュリエット』
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ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840−1893)
幻想序曲『ロミオとジュリエット』(1870年初演)
初期の作品であるが、師バラキレフの多大な助言により、シェークスピアの戯曲の登場人物や場面が、構築的に明解に表現されている。
(1)序奏:ローレンス修道士、深い憂鬱に沈むロメオ
冒頭のクラリネットとバスーンは、後述の闘争場面II,IIIの最中にも登場する。ロメオの憂鬱と悶える心、そしてジュリエットとの運命的な出会いも予兆させる幻想的な序奏である。
(2)闘争場面 I
憎しみ合うモンタギュー家とキャピュレット家との間の争いが、剣のつばぜり合いの音(シンバル)等で生々しく描かれる。
(3)愛の場面 I
印象派ドビッシー風の管弦楽法を用いた、夜空のもとの有名なバルコニーの場面。
(4)闘争場面 II
二人を助けようとするローレンス修道士のテーマも展開される。
(5)愛の場面 II
刹那的で狂おしい情景が彷彿とされる。
(6)闘争場面 III
激しい闘い、懸命に動くローレス修道士、ロメオによるティバルトの殺害などが重層的に表現される劇的な部分である。
(7)終結部: ロメオとジュリエットの死と、二人の魂の昇天
キャピュレット家の墓の中で擦れ違いで死んでゆく二人の歎き、慟哭、心臓の鼓動が聞こえてくる。 やがて木管による賛美歌が響いてロ長調に転調し、ロメオとジュリエットの魂が昇天し天国で結ばれる。 かくして壮大な序曲は幕を閉じる。
〜天国の調性としてのロ長調〜
ワーグナーが歌劇『トリスタンとイゾルデ』(1859年)の「愛の死」で天国の調性としてロ長調を用いて以来、チャイコフスキーのみならずプッチーニ(歌劇『マノン・レスこー』の第3幕への前奏曲)等多数の作曲家が踏襲している。
2005年7月15日 セントラル愛知交響楽団定期演奏会プログラムの曲目解説として書かれたものです。
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