|
細川俊夫 笙とオーケストラの為の『うつろい・なぎ』
|
細川俊夫(1955−): 笙とオーケストラの為の『うつろい・なぎ』
作曲者自身がエッセーで曲を論じているので、引用する。
「笙の一つの響を、梵鐘(ぼんしょう)のように考える。そしてオーケストラはその笙の響を生み出す背景の自然であり、宇宙である。笙の静かな一吹きの響が、背景のオーケストラに余韻を与える。そのこだまを受けて再び笙がエコーを返し、背景に環っていく。そのこだまが、幾層にも時間のずれを持って、世界に響き渡る。
全体は深い静けさに包まれている。
ピアニッシモよりもかすかな遠い響。そのほとんど聴こえないような可聴域の限界の響が、人を遠い記憶の世界、聴くことの始源の世界へ連れ出す。」
ステージ上のオーケストラは左右対象に分けられ、客席後方にも2つの小グループが配置される。
「舞台上の二つの大きなグループは、笙の響を映す背景であり、客席の後方に用意された二つのグループは、庭の借景の山のように、舞台上のオーケストラとは無関係にゆっくりとしたリズムで動く世界を象徴させた。そして、笙が生み出す、あるいは背景が生み出す梵鐘に似た響は、ホール全体をゆっくりうつろい、響き渡ってゆく。」
この作品は、岡山県奈義(なぎ)現代美術館にある、宮脇愛子のステンレスワイヤーによる彫刻、「うつろい」から触発され、題名もそこから由来する。宮脇氏がその彫刻に引用したゲーテの言葉を、細川氏もスコア冒頭に記している。
霊(たましい)は 水さながらに 天から降りて 天に昇り そして、また地にくだる はてしなくめぐりめぐって
ゲーテ 「水の上の霊(たましい)の詩(うた)」
この曲は、1996年3月15日宮田まゆみ(笙)、小松長生(指揮)、ケルン放送交響楽団で世界初演された。
2005年1月28日のセントラル愛知交響楽団演奏会プログラムのために書かれたものです。
|
Copyright© 2001 Chosei
Komatsu. All rights reserved
無断転載禁止 |
|