千住明(1960〜)
千住博(日本画)、明(作曲)、真理子(ヴァイオリン)3兄妹揃っての活躍ぶりは有名であるが、芸術面で兄妹がお互いに重要に繋がっている事を明氏が述べているので引用する。
「同じDNAを共有しているというのはおそろしいもので、兄妹たちの作品や演奏を見ると自分が表現したい世界と重なる。兄・千住博の絵画の中には僕の音楽と同じ空気が流れている。妹・千住真理子のあの独特なヴァイオリンの音色は僕にとってのヴァイオリンそのものである。何年か前から兄・博が彼の重要な展覧会場で「彩霧」(注:明作曲、真理子ソロ)を流すようになった。その展覧会場で、同じ山を違うふもとから登っている3人を悟った。絵画と作曲と演奏はそれぞれコラボレーションを目的としていなかったにもかかわらず調和していた。一つの表現を3乗にしている様な強力な世界があった。最近3人兄妹がマスコミ等でもてはやされ、本人達は3人がグループのように見られる事にいささか疲れているが、重要な場面でのコラボレーションは僕達にとって、もはや義務である。」
筆者は明氏とは、彼が毎年編曲を担当する「辛島美登里クリスマスコンサート」で2000年に出会って以来、ピアノ協奏曲「宿命」(TV『砂の器』サウンドトラック)録音や「千住明個展コンサート」の指揮などで頻繁にご一緒させて戴いている。
ファンファーレ/スーパー競馬のテーマ (1995年)
フジテレビ系「スーパー競馬」でGIレース本馬場入場の時などに流れる。この壮麗なファンファーレを聴けば、ファンでなくとも万馬券をワクワク夢見て思わず競馬に足を運びたくなる。千住氏の管弦楽法の懐の深さが良くわかる作品だ。
ヴァイオリンとストリングオーケストラのための「四季」(2004年)
兄の千住博(日本画家)が2004年12月羽田空港第2ターミナルの巨大吹き抜けスペースに吊りアート「滝のオーロラ」および天井画「銀河」を委嘱創作。そのスペースに常時流されている。各季節を冠した4小品から成る「四季」は、特定の自然を描写した風景画ではなく、形而上、心象の中での純化された<春><夏><秋><冬>である。
Kyrie(キリエ) (1989年)
題名は鎮魂ミサ(レクイエム)で歌われる“キリエ・エレイソン”(主よ、憐れみたまえ)に由来する。文字通り霊魂を弔う祈りの曲である。「2・26事件」を題材にした五社英雄監督の映画「226」の為に書かれた。
2006年7月14日セントラル愛知交響楽団定期演奏会のプログラムの曲目解説として書かれたものです。