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チャイコフスキー 交響曲第4番
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ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840−1893)
交響曲第4番ヘ短調 作品36 (1878)
当時タブーとされた同性愛の噂の渦中に若きアントニナ・イワノワナと結婚して短期間で破綻、入水自殺を図った翌年に書かれた。民衆のメロディーを題材として使ったボロディン、キュイ、リムスキー・コルサコフ等ロシア国民学派とは一線を画していたチャイコフキーが、イタリヤ(第2楽章)やロシア・ウクライナ民謡風(第3楽章中間部、第4楽章)のメロディーを使ったことでも注目された。 チャイコフスキーと一度も会うことなく彼を尊敬し支援したフォン・メック夫人にこの作品は献呈されている。
第1楽章 Andante
sostenuto - Moderato con
anima
聖書における「最後の審判」の召喚の合図として鳴り響く金管ファンファーレ。下降する動きと相俟って絶望的な運命・宿命を表す。 審判の木槌の大音響は壮絶である。そして問い、哀しみ、葛藤、慟哭に満ちたワルツが始る。 第2主題では、永遠の楽園を束の間に憧憬するが、宿命のファンファーレが常に後続する。
第2楽章 Andantino
di modo di
canzona
イタリア旅行中耳にしたメロディーを、オーボエ独奏に用いたとされる。弦による伴奏のピツィカートはギターを想起させる。中間部は全曲を通して唯一穏やかな感情、歓びと希望を感じさせる部分である。
第3楽章 Scherzo
: Pizzicato ostinato :
Allegro
ピツィカートを大胆に中心に据えた作曲史上重要な楽章でもある。民衆の踊りと田舎の楽隊の行進が交錯する中間部も斬新だ。人間関係に明らかに疲れているチャイコフスキーが、自然や田舎に安息を求めるか、少なくとも目を向け出していると言えよう。
第4楽章 Allegro con fuoco (アレグロ、炎のように)
エネルギッシュに熱狂的に駆け抜ける文字どうり炎のようなフィナーレである。哀愁を帯びた民謡風の主題が用いられる。 クライマックスで第1楽章の冒頭ファンファーレが劇的に環って来るが、これはどこまでも追って来て逃れられない宿命を表現するものである。しかしながら最後は、熱狂的に幕を閉じる。
2005年1月28日 セントラル愛知交響楽団定期演奏会プログラムの曲目解説として書かれたものです。
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