先日、大阪ザ・シンフォニー・ホールでクラシック・ギターの至宝、ナルシソ・イエペス氏と協演した。映画「禁じられた遊び」で一躍有名になった巨匠も今や大変な高齢で、大阪センチュリー交響楽団の練習場にも、歩くのがやっとという感じで現れた。
ところが、協奏曲が始まるや、正確無比、スペインの血潮溢(あふ)れる演奏で我々を感嘆させる。時々片手をちょっと挙げてオーケストラを止め、「ここは心臓がドクン、ドクンと脈打つように」など適切なアドバイスを与えてくれる。我々は彼のか細いかすれた声を、神の啓示を仰ぐような心地で聞いた。 |