エッセイ

ワシントンDC

1988〜92年ボルティモア交響楽団のアソシエート・コンダクターを務めていた頃、ワシントンDCは車で45分位のところにあり、共通の友人を介してDCに住む菊地邦夫・エミ夫妻と知り合った。菊地夫妻との御縁で色々な分野で活躍するワシントンの人達と友達になり、その交友は今に至るまで続いている。
 
2003年2月末、懐かしのワシントンDCを久しぶりに訪れた。 その折世界銀行、IMF、米州開発銀行、国際協力事業団 (いずれも途上国を支援する機関)の方々と相次いでお会いする機会があった。 世界の人口の実に80%が援助を必要としており、戸田隆夫氏(JAICA・国際協力事業団)によれば、貧困・内戦・環境破壊が三つ巴で同時進行しているという事実認識が重要であるとともに、その三者に包括的に取り組んで行くのが急務との由。
 
取り組む人々の決意と清々しさに感動を覚えた。ただお金で支援しその返却をもって終わりとする発想から、『豊かさ』の新しい定義付けも含めた文化・教育支援が幅広く進行していこうとしている。自然が手付かずで残っている国々のなかから、こうした支援のなかで、いわゆる先進国より豊かな生活を享受できる国が出てきている状況に、目から鱗が落ちる心境になった。 
 
私の携るクラシック音楽は先進国や大都市で主に発展してきたが、これからは戦乱から復興する過程での教育・文化・社会環境整備・国際信用回復の重要な要素として、世界中に今以上に広がって行く予感がした。
(2003年3月)


Copyright© 2001 Chosei Komatsu. All rights reserved
無断転載禁止