一月末、客演指揮でエドモントンを訪れた。見知らぬ土地での客演は、ホテルと会場の往復のほかは、静かに淡々と過ごすのが普通である。だが、今回は違った。 着いたその晩から伊勢茂総領事がアルバータ牛のステーキを出すレストランに連れていってくださった。ホテルに「今晩はカジュアルでお出でください」との総領事直筆のメッセージが待っていたので、ラフな格好でロビーに降りてゆくと、三つ揃いを着た紳士が伊勢総領事であった。